2026年01月29日

2026年01月29日

目次
遊びと成果のあいだを考える
~ 表現とケアとテクノロジーのこれから ~
福祉と技術の関係は、これまでの「支援する/される」という構図から、少しずつ「一緒に遊ぶ」という関係へと変わりつつあります。
医療や障害福祉などのケアの現場でテクノロジーを活用するときには、命の安全、人権・プライバシーへの配慮、導入による効果などが重視されます。そのため、どうしても「遊び」や「余白」が入り込みにくくなることがあります。
けれども、よい生き方、よいケア、よいテクノロジーについて考えるとき、誰もが一つの正解を持っているわけではなく、それぞれが迷いながら、自分なりの考えを育てています。そうした違いや揺れを持ち寄って対話するためには、互いに変化していくことを認め合える「遊び」の時間が必要なのではないかと、わたしたちは感じています。
遊びの時間を考えるうえで、「ネガティヴ・ケイパビリティ」という言葉があります。これは、不可解な出来事や問題に出会ったときに、すぐに答えを出そうとしたり、無理に納得しようとしたりせず、「わからなさ」を抱えたまま、揺れながら考え続ける力のことです。
一方で、現場では、目的や答えの説明責任、単年度予算といった制約、社会的インパクトへの期待などから、限られた期間のなかで成果を求められる場面も少なくありません。成果を出すことが大切であるのは理解できますが、成果が見えにくかったときに、関係そのものが途切れてしまう危うさもあります。
本研究会は、こうした「遊び」と「成果」のあいだにあるものを、立ち止まって考えてみようとする時間です。
わたしたちは今年度、「Art for Well-beingプロジェクト 伴走型実践プログラム」を実施しました。このプログラムでは、福祉現場と〈技術者〉、そしてコーディネーターが協働しながら、表現×ケア×テクノロジーによる新たな実践に取り組んできました。
https://art-well-being.site/news/2313/
「はじめまして」の関係から始まり、まずは一緒に遊ぶ時間をつくって可能性を探り、「これでやってみよう」と腹をくくって実際に動いてみる。そして、何を成果と考えるのかをあらためて問い直す。そうした一連の過程のなかで、どんなことを感じ、何を考えながら取り組んできたのかを、本研究会では実践者それぞれの立場から共有します。
さらに、その話を手がかりに、「プラグマティズム言語哲学」の視点から実践を振り返り、遊びと成果のあいだにあるものについて、哲学者の朱喜哲(チュ・ヒチョル)さんと、実践者のみなさんと一緒に考えていきます。
「プラグマティズム言語哲学」は、実践のなかで自然に生まれてくる言葉や行動に目を向け、その生き生きとした豊かさをできるだけ損なわずに捉え直しながら、言葉がどのように働き、実践を形づくっているのかを考えるための道具です。
よく生きるために、どのような言葉を使い、どのような表現をつくり、どのように関係を結んでいけばよいのか。表現とケアとテクノロジーのこれからのあり方について、ぜひ一緒に考えてみませんか。
Art for Well-being 研究会へのご参加を、心よりお待ちしております。
開催形式(全3回)
・申込制、参加費無料
・オンライン(YouTubeライブ、申込者にURLを限定公開)
・アーカイブ配信は期間限定(1カ月)、申込者のみにURLを共有
・情報保障:文字起こしあり
■第1回 実践編[東京]
2026年2月20日(金)19:00~21:00
・〈技術者〉宇都宮 幹(Little by Little 主宰/デザイナー)
・〈福祉現場〉小泉 雄一(サポートハウス ココロネ板橋 生活介護 サービス管理責任者)
・〈福祉現場〉水戸 抄知(平成医療福祉グループ 介護福祉事業部 ダイバーシティ&インクルージョン推進室所属)
・〈コーディネーター〉根上 陽子(キュレーター、アート・メディエイター、Living Together Co.代表)
・全体進行:小林 茂(情報科学芸術大学院大学[IAMAS] 教授)
■第2回 実践編[愛知]
2026年2月25日(水)19:00~21:00
・〈技術者〉野口 桃江(アーティスト)
・〈福祉現場〉上田 一稔(特定非営利活動法人幸せつむぎ 理事長)
・〈福祉現場〉岩垂 理紗(NPO法人幸せつむぎ art&consider事業部責任者)
・〈コーディネーター〉居石 有未(ディレクター)
・全体進行:小林 茂(情報科学芸術大学院大学[IAMAS] 教授)
■第3回 熟考編
2026年3月10日(火)15:00~17:00
・朱 喜哲(哲学者)
・根上 陽子(キュレーター、アート・メディエイター、Living Together Co.代表)
・居石 有未(ディレクター)
・小林 茂(情報科学芸術大学院大学[IAMAS] 教授)
Googleフォームからお申込みください。後日、YouTubeライブのURLを共有いたします。
フォームURL: https://forms.gle/sB2sDoHgcpPvFf949
第1回 実践編[東京]

宇都宮 幹
Little by Little 主宰/デザイナー
1979年生まれ、広島県呉市の港町出身。デザインを手段として、対話を手がかりに、形や仕組みを立ち上げてきた。近年は福祉や児童と関わる場にも携わり、ユニバーサルデザインのワークショップや、車いす陸上選手の競技用グローブ開発などの実践を行っている。成果や完成形だけでなく、その過程で生まれる関係の変化にも目を向けながら、人の感情や成長に関心を持ち、言葉にならない感覚を手がかりに、ときに立ち止まりながら、試みや表現を通して深く関わりを探っている。

小泉 雄一
サポートハウス ココロネ板橋
生活介護 サービス管理責任者
大阪出身。大学卒業後、企業で営業職として勤務。4年半のキャリアを経て、自分がやりたいことは何かを考えるようになり退職。その後、「音楽が好き」という理由だけで路上やライブハウスで活動を行うも、福祉との出会いをきっかけに「福祉の道で生きていく」ことを決意。2010年に平成医療福祉グループに入職。2020年、ココロネ板橋の立ち上げに伴い上京。現在は、同施設にて生活介護事業の施設運営に携わる。グループ理念である「じぶんを 生きるを みんなのものに」を念頭に、利用者一人ひとりの個性を重視し、その人に合った支援をおこなう中で、今後はケアの現場における音楽や表現の可能性について広げていきたいと考えている。

水戸 抄知
平成医療福祉グループ 介護福祉事業部
ダイバーシティ&インクルージョン推進室所属
採用アウトソーシング会社にて、企業の新卒・中途・障害者の採用コンサルティング業務に従事していたが、東日本大震災震災を契機にキャリアチェンジ。NPO法人及び島根県のコーディネーターとして、地方移住支援・関係人口づくり支援の経験を経てフリーランス。2020年6月より平成医療福祉グループに入職。介護福祉事業部の企画チームにて、医療や福祉の専門職ではない立場で、主にグループの高齢・障がい者施設の困りごとの解決、施設と地域をつなぐ仕組みづくりや関係性づくりを推進する役割を担っている。

根上 陽子
キュレーター、アート・メディエイター
Living Together Co.代表
津田塾大学学芸学部国際関係学科卒業。 在学中にロンドンの Wimbledon School of Art に留学。2021 年に Living Together Co.を設立し、アート&サイエンス等の異分野、国際間の協働事業・文化プロジェクトマネジメント、アーティストエージェンシー、インドネシアのアートコレクティブ GUDSKULと協働した教育プログラム開発やインクルーシブ企画等、キュレーション&コンサルテーションを行っている。オーストラリアのパフォーマンスアーティストSTELARCエージェントも務める。
第2回 実践編[愛知]

野口 桃江
アーティスト
インスタレーション、作曲、演奏をとおして、心拍や呼吸などの生体情報を取り入れた作品や、自然のなかに楽器を設置し、即興演奏という営みをひらくプロジェクトを行う。作品はこれまで国内外のコンサートや芸術祭で紹介されてきた。2019年、自宅でひらいていた音楽教室に、一人の障がいのあるお子さんが訪ねてきてくれたことをきっかけに、音を通したコミュニケーションの探求を始める。以来、さまざまな年齢、国籍の人たちと共に音楽をすることをライフワークとしている。桐朋学園大学音楽学部作曲理論学科卒業。デン・ハーグ王立芸術アカデミー ArtScience 科修士課程修了。共著に『演劇と音楽の創作ワークショップ』がある。

上田 一稔
特定非営利活動法人幸せつむぎ 理事長
中部大学大学院国際人間学研究科心理学専攻博士後期課程単位取得満期退学。特定非営利活動法人および社会福祉法人にて、障害福祉分野に従事し、児童指導員、生活支援員、サービス管理責任者等として勤務。2015年から現法人にて従事し、2025年理事長に就任。社会的活動として、桜花学園大学教育保育学部非常勤講師。愛知県長久手市地域福祉計画地域福祉活動計画策定委員等。専門は障害福祉、障害児保育、社会的養護。日本重症心身障害学会、日本発達心理学会等に所属。

岩垂 理紗
特定非営利活動法人幸せつむぎ art&consider事業部責任者
愛知学泉大学家政学部卒業。公立中学校教諭(家庭科)として4年間勤務。2019年から現法人にて従事。児童指導員、児童発達支援管理責任者として勤務しながら、こどもたちとアート活動を開始。2023年に法人内でart&consider事業部を立ち上げ、アート作品の制作、重症心身障害児および医療的ケア児の衣服制作、個展開催に尽力中。日本アートミーツケア学会所属。機能訓練を用いた作品作りに取り組み、新しいアート活動に挑戦中!

居石 有未
ディレクター
1992年 名古屋市生まれ。名古屋造形大学・大学院 日本画 修了。大学職員を経て、クリエイティブコミュニティ FabCafe Nagoya にてプロデューサー/ディレクターとして、企業とクリエイティブをつなぐプロジェクトの企画・運営などに従事。その傍ら、名古屋・岐阜にて、地域や公共を舞台にした芸術企画に携わる。現在は SLOW ART CENTER NAGOYA(合同会社コマンドA) にて、芸術の社会における新たな価値を提案するとともに、フリーのディレクターとしても活動する。好きな食べ物はいちご。
第3回 熟考編

朱 喜哲(チュ・ヒチョル)
哲学者
大阪大学 社会技術共創研究センター招へい准教授
1985年大阪生まれ。新居浜・岐阜・北九州などで育つ。大阪大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。専門はプラグマティズム言語哲学とその思想史、ならびにデータビジネスにおけるELSI(倫理的・法的・社会的課題)の理論と実務。著書に『人類の会話のための哲学』(よはく舎)、『〈公正(フェアネス)〉を乗りこなす』(太郎次郎社エディタス)、『100分 de 名著ローティ 『偶然性・アイロニー・連帯』』(NHK 出版)、共著に『ネガティヴ・ケイパビリティで生きる ― 答えを急がず立ち止まる力』(さくら舎)、『信頼を考える』(勁草書房)などがある。

(全体進行)
小林 茂
情報科学芸術大学院大学[IAMAS] 教授
オープンソースハードウェアやデジタルファブリケーションを活用し、多様なスキル、視点、経験を持つ人々が協働でイノベーションに挑戦するための手法や、その過程で生まれる知的財産を扱うのに適切なルールを探求。著書に『テクノロジーって何だろう?——〈未完了相〉で出会い直すための手引き』『Prototyping Lab第2版』『アイデアスケッチ』、監訳書に『Design Meets Disability(デザインと障害が出会うとき)』など。岐阜県大垣市において2010年より隔年で開催しているメイカームーブメントの祭典「Ogaki Mini Maker Faire」では2014年より2024年まで総合ディレクターを担当。
愛知県で取り組んでいる実践について、2月7日(土)~8日(日)に活動展示&座談会を開催します。
愛知と東京で取り組んできた実践について、対面で合同の報告会を開催します。継続して実施している重症心身障害児と音色生成AI(Neutone)の取り組みもご紹介します。
主催:文化庁、一般財団法人たんぽぽの家
文化庁委託事業 「令和7年度障害者等による文化芸術活動推進事業」
一般財団法人たんぽぽの家
Art for Well-being 事務局
〒630-8044 奈良県奈良市六条西3-25-4
TEL 0742-43-7055
MAIL art-wellbeing@popo.or.jp

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