Art for Well-Being

Report

2024年04月10日

【レポート】Risa Sophiaさん×ファブラボ仙台/Art for Well-beingのひろがり

2023年10月1日に開催した体験会・トークセッションをキッカケに出会い、肢体不自由児の Risa Sophiaさん(以下、Risaさん)と、FabLab SENDAI – FLAT(以下、ファブラボ仙台)との協働も生まれています。

重度の脳性まひのあるRisaさんは、宮城県内の特別支援学校に通いながら、自宅では視線入力の技術を使って作品を制作しています。下の画像は2023年8月27日に開催された仙台クラシックフェスティバルのプレ企画・街なかコンサート「せんくら・リラックス・コンサート」に参加した後にRisaさんが描いた作品です。

Risa Sophia 「音のシャワーを浴びて」 2023年9月

[Risaさんの参考資料]
(上)自由自在 目で描く喜び
(中)視線入力 広がる変化
(下)いつか妹と話したい

読売新聞オンライン

本記事では、Risaさんと宮城県仙台市内にある市民工房ファブラボ仙台との協働についてレポートします。

ファーストコンタクトと試作

最初にファブラボ仙台について簡単に紹介します。ファブラボ仙台は、レーザーカッターや3Dプリンターなどのデジタル工作機械をはじめ、色々な道具や素材や技術について、手を動かして体感しながら学ぶことのできる場所です。また、周りの人と話をして協力しながら、自分のアイデアや思いつきを形にすることのできる場所でもあります。

FabLab SENDAI – FLAT https://fablabsendai-flat.com/

2023年12月16日、ファブラボ仙台の小野寺志乃さんはRisaさん宅を訪問しました。普段使用している機器やスイッチなどRisaさんの在宅での様子を見た後に、今回の協働として下記のような方向性を話し合いました。

・今後の創作や生活に新しいヒントとなる技術的アドバイスがほしい
・Risaさんの作品を通して、医療的ケア児や重度障害児のことを社会に知ってもらい理解が広がるために作品のグッズ化をしたい
・ロゴや商品に添付するようなもの、あるいは活動を紹介するパネルなどを作りたい

そこで、作品を使用したグッズ製作と、作品そのものをブラッシュアップすることを試みました。具体的には、キーホルダーの製作と、アクリルキューブ作品の試作を行いました。

キーホルダーの製作

Risaさんが雲の形のキーホルダーを希望していたので、Risaさんのグラフィックを使用し、23種類の形状×2パターンの印刷方法で合計46点のサンプルを制作しました(ロゴは仮のもので作成)。

パターンA
グラフィック部分はカラー、ロゴはホワイトで印刷
印刷順序:ホワイト(ロゴ) → カラー(グラフィック) → ホワイト(ロゴ)

パターンB
グラフィック部分はホワイト& カラー、ロゴは透明
印刷順序:カラー → ホワイト → カラー(全てグラフィック)

「サンプルの点数が多くなりましたが、たくさんあるものの中から選ぶという体験をしていただきたくて、できる限り多くのバリエーションをデザインしました」と小野寺さん。

既存作品のブラッシュアップ

Risaさんがすでに制作しているアクリルキューブ作品をブラッシュアップしたいという希望から、約9cm四方のアクリルキューブの側面にRisaさんのグラフィックを印刷し、上面に仮のロゴをホワイトで印刷しました。

中に設置しているLEDライトには、micro:bitという小型コントローラーを使用しています。micro:bitはプログラムを書き換えれば色や光り方を簡単に制御可能です。現状では、ボタンを押すことで色を変更できるように設定しています。


試作に対する意見交換とその後

小野寺さんが試作を持ってRisaさん宅へ訪問し、キーホルダーとアクリルキューブを実際に手にしながら意見交換をしました。

キーホルダーについては「視線入力の認知度を向上させるアイテムとして使用したい」という当初の目的に、デザインを決定して追加で30点を製作しています。

最終的な制作物はこちら ↓↓


2024年3月末の卒業式や異動に合わせて、お世話になった先生たちへのメッセージ付きで渡すことができ、異動先でも話題にしてもらいたいという思いから、裏面に空白スペースを設けた仕様となりました。

アクリルキューブについては、LEDの光り方などはまだまだブラッシュアップの必要があるので、どんな光り方が良いかなどを話し合いながら改善していく予定です。

小野寺さんは今回の協働をとおして「試作の話だけではなく、Risaさんやお母さまの話をお伺いし、Risaさん自身の可能性をひろげることはもちろんですが、支援や教育現場における認知度の向上についても、何か力になれればと思いました」と振り返ります。

Risaさんとお母さんは「制作物のクオリティーの高さと試行錯誤してくださった様子にすごく感激しました!!ありがとうございます。肢体不自由の子どもで自己表現やアート活動をしている人が少ないので、子どもたちの可能性を広げ、支援者さんの関心のきっかけとなることを期待しています。また、宮城県は肢体不自由支援学校がとても少ない現状で、仙台市内では知的障害支援学校に肢体不自由児も通っている状況です。肢体不自由児向けの専門教育を受けにくい現状なので、自立して社会に出られるかが今の課題です。肢体不自由児と技術者の協働で補うことができたら、肢体不自由児の可能性が大きく広がりますね」と、現状の課題感と今後への思いを伝えています。


Risaさんとファブラボ仙台の協働に関心のある人や、何か手伝いたいという人は、ぜひご連絡ください。また、今後は全国各地でこのような協働がひろがっていくための取り組みも必要になってきます。本事業についてより詳しく知りたいというご希望、トークイベントやワークショップの開催、協働事業のコーディネートなど、必要なサポートがありましたらご相談ください。

お問い合わせ

一般財団法人たんぽぽの家
Art for Well-beingプロジェクト事務局
〒630-8044 奈良県奈良市六条西3-25ー4
TEL. 0742-43-7055 FAX. 0742-49-5501
MAIL art-wellbeing@popo.or.jp



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